当院では、症状やお身体の状態に応じて、ご自身でできる簡単なセルフケアをお伝えしています。

多くはストレッチやトレーニングの類で、固くなっている筋肉を軟らかくしたり、弱っている筋肉をしっかり働かせることで、身体のバランスを良くして、早く症状が改善するように促すためのものです。

症状などによって、必要なこと、やるべきことは変わってきますが、個別のセルフケアはまた別の機会にするとして、ここでは身体全体を整える方法の一つをご紹介します。

東洋医学的な考え方、やり方なのですが、一言で言えば

「関節を回す」

ということに尽きます。

目次

なぜ、関節回し?

東洋の医学、あるいは体育学は、身体をパーツに分けて捉えるということをあまりせず、身体全体のつながりや流れを重視し、ひとまとまりの機能体として捉え、整えることを考えます。

その点、現代医学や運動理論とは、ちょっと視点が違います。

どちらも一長一短なので、個人的にはどちらも取り入れて「良いとこ取り」すればいいと考えています。

さて、東洋医学では、身体の「気の流れ」を重視します。

人の身体には「気」と呼ばれるエネルギーが存在し、体幹や手足に張り巡らされた「経絡」というルートを流れているとされています。

この「気」の流れが滞ったり、あるは体の中で「気」のエネルギーの強いところ、弱いところ、多いところ、少ないところ等の偏りが生じると病気になると考えられているので、そうならないように流れを整えるのが、中国の「鍼灸」や「按摩」、「推拿」だったり、日本の「指圧」や「整体」というものに共通してみられるアプローチ法です。
(もちろん、やることはそれだけではないですが。)

その「気」の流れを整えるために、整体や按摩・推拿などの施術においては、関節をクルクル回して整える手法は多かれ少なかれ必ずあります。

筋肉や血液・リンパの流れを整える意味もありますが、関節の詰まりをほどくことで、そこで滞りがちな経絡の気の流れを整えるという意味合いも強いです。

関節を回す調整法は、特定の経絡だけをねらって流れを強くしたりすることはできず、そこを通る全部の経絡の流れをまんべんなく良くする効果があります。
細かく効果を限定するには、経絡(線)やツボ(点)を選んで個別に調整するといった形で、目的によって使い分けます。

自分で関節を回す

前置きが長くなりましたが、施術で関節を回して経絡の「気」の流れが整うなら、自分で回しても同じでは?と思いませんか?

一つだけ注意点をクリアすれば、自分で回してもある程度同じように効果があります。

実際、太極拳や気功などでは、自分で腕・肩や足腰を回して「気」の流れやすい身体を作るための練習法があります。

注意点とは、回したい「関節」の動きに関係している筋肉の力をなるべく「使わないようにする」ということです。

筋肉に力が入ってしまっていては、うまく関節が弛みませんから、それは単なる不十分な筋トレにしかなりません。

文章で書くと、小難しく思えますが、ちょっとコツさえつかめば、動き自体は簡単なので、誰でもできますし、ちょっとした肩こりや疲れ等の不調を改善するには、十分効果があります。

オススメの関節回し = 中国の「通経功」

僕は以前、縁あって中国の「国家級非物質文化遺産」(日本でいう人間国宝みたいな感じです)の肩書きを持つ鍼灸・推拿・気功の大家である某先生に少しだけ指導を受けたことがありますが、この先生が教えていた「通経功」という養生気功の一つが、とてもよく出来ていました。

ザックリ言うと、体中の各関節を一つずつ力を抜いて回していくやり方です。

「通経功」という名前だけあって、

通経 = 経絡に気を通す

ことが目的で、一通りやっても5分~10分くらいです。

余力があれば20分くらいかけてやるとなお良いです。

余裕があれば、また写真か動画で紹介できればと思いますが、ここではとりあえず文章でご紹介だけしておきます。

「通経功」は、上肢、体幹、下肢の順に、各関節を回していきます。

順番としては、

・上肢 : 肩→肘→手首
・体幹 : 首→胸→腰(3種類)
・下肢 : 股→膝→足首

というようにやっていきます。

ポイントは、上にも書いているように、回す「関節」には力を入れず、

他の部位の力を借りて回す

ようにします。

具体的には、

・肩を回す(腕全体をグルグル振り回すような動作)時には腰の動きで
・肘を回す時には、肩~上腕の動きで
・手首を回す時は腕の動きで

・首を回す時は頭の重みで
・胸を回す時は腰の動きで、
・腰を回す時は手で押したり膝・股関節の動きで、あるいは上半身全体の重みを使って

・股関節を回す時は膝の動きで
・膝を回す時は股関節の動きで
・足首を回す時は膝の動きで

…という具合です。

書く前からわかっていたことですが、たぶん読んでもわからないですよね(汗)。

いずれ、動画解説したいと思います。

当院にお越しの方は、施術の後にでも聞いていただければご説明します。
(いっぺんに全部は無理ですが…)

関節回し「通経功」の効果

一通りやってみると、経絡に気が流れる感じがわかります。

ウソです(笑)。

力を抜いて身体を大きく伸びやかに動かすことになるので、筋肉がゆるんで血液やリンパの流れが良くなります。
固くなって動きの悪い関節が、動きやすくなります。

一般的な感覚としては、コリがほぐれてダルさがなくなり、スッキリ爽快になります。

ちょっとした歪みであれば、それもある程度整うので、ダンスやヨガなどのスポーツをしている人はバランスよく安定して立てるようになったと感じる人もいるかもしれません。

一日デスクワークが続くような人は、1時間に一回くらい休憩の時間をとって、少しずつでもやれば、疲れにくくなり、集中力も戻ってきますよ。